基本テキストを何度も繰り返し読み込み、理解を深めることが重要です!

  • 投稿者:へびさん
  • 勉強形態:独学
  • 受験回数:1回
  • 勉強期間:約2か月

はじめに

 「資格も、経験の積み上げもない仕事を続けていていいのか・・・」と思い、転職したのが3年前。ただ、現職も以前の職も「簿記」を活用する仕事ではありません。

 それでも簿記2級の資格に挑戦したのは、今後自分が「どのように生きられるか」その選択肢を広げたいと思ったからです。

 様々な資格を獲得し、再度転職せねばならない状況になっても、柔軟に対応できる人間となる、それが最終的な目標です。簿記は「自分の可能性を広げる」ためのツールとして考えています。

 転職直前になんなく3級は取得できたのですが、転職後、他の資格取得を優先させたため、なかなか2級に挑戦することが出来ませんでした。

 このままでは他の資格を「言い訳」にして、ずっと2級を受験することが出来ない。ダメ元ではあっても、まず受けてみないことには始まらないと思い、年始に思い切って簿記2級の受験申込をしました。

 他の方よりも、受験動機や学習期間、状況等も若干特殊かとは思います。それでも、少しでもご参考になればと思いますので、よろしくお願いいたします。

使用したテキスト・アプリ・電卓

テキスト

  • スッキリわかる日商簿記2級 商業簿記(TAC出版)
  • スッキリわかる日商簿記2級 工業簿記(TAC出版)
  • スッキリとける 日商簿記2級 過去+予想問題集(TAC出版)

 受験に必要なものは3級の経験を思い出しながら揃えていきました。商業・工業で1冊ずつと、3級の経験から過去問の問題演習が重要と考え、過去問題集を準備しました。

 3級のときは正美堂出版の「超スピード合格!」を使ったのですが、今回はTAC出版のスッキリシリーズに切り替えました。

 前年に受験したFPの試験でもTAC出版のテキストを使って感触がよかったこと、TAC出版のサイトから購入すれば割引が適用されるのが大きな理由です。

 基本テキストの2冊は、内容もわかりやすく系統立てて書かれていたと思います。特に工業簿記の「シュラッター図」はわかりやすかったです。問題集の解答も説明がわかりやすく書かれていました。

 イマイチな点があるとすれば、テキストと問題集とを独立させて使えないことです。資格によっては、一体式テキストであっても「テキスト」と「問題集」とを分冊にできるものがありますが、こちらは「問題集の解答のみ」を分冊にできる形でした。

 過去+予想問題集は、レベル・解答解説ともに満足いたしました。解答用紙がネット公開されているので、2回目以降の解き直しもしやすかったです。

 なお、直前予想問題は別のテキストを購入してまでは取り組みませんでした。各テキストに付随している予想問題で充分と感じたからです。

アプリ(パブロフ簿記2級 商業簿記)

 上記の3冊とは別に、仕訳は常に意識してトレーニングしなければならないと思い、アプリのなかで比較的評価の高かった「パブロフ簿記2級 商業簿記」をダウンロードしました。

 3級のときはアプリではなく「きおっくす装置」のサイトを使っていましたが、新課程に対応してないっぽく感じましたので変更いたしました。

 実際に使ってみた感想は、ほぼ仕訳の選択に特化しており、計算もややこしくならないよう工夫されているため、「仕訳の仕組みを学ぶ」にはちょうどよく感じました。

 ただ、一部問題は解答解説が簡略化されすぎていてわからず、テキストに戻って復習しなければなりませんでした。

電卓(CASIO JF-120GT-N)

 自宅でも会社でもカシオの電卓を使っています。「CASIO JF-120GT-N」は3級受験の前に購入し、資格勉強と試験の時のみに使っています。カシオ製の電卓、あるいはカシオ式の配置であれば私としてはこだわりがありません。

 ボタン配置は異なりますが、普段、自宅で使用している「CASIO MH-10T」でもあまり問題は感じなかったと思います(※2級は10桁の計算までで事足りるため)。

資格受験ロードマップ

 資格の勉強をするさいには、私はいつも以下のようなロードマップに沿って勉強を進めます。ミスノートやまとめノート等の作成を推奨されているところが多いですが、それらを作成したことはありません。

  • 私のロードマップ
    1. まずテキストを「理解できたつもり」になるまで読む。
    2. 問題を解く、たいていあまり出来ないが、わからないときは解答を見ながらでも解く。わからなかった問題はチェックをつける。
    3. 解答を見てもわからない問題はテキストに立ち返る。
    4. チェックをつけた問題をもう一度解く。
    5. 「2」「3」と同時並行で、通勤電車の中で学習できるアプリに取り組む。間違った問題やチェック問題の復習、ランダム出題機能があるものを用いる。
    6. 過去問に取り組む。
    7. テキスト付随の予想問題に取り組む。

 今回も若干のアレンジを加えながら勉強を進めました。1日の勉強時間は、基本的に毎日1時間程度(過去問や予想問題演習のときのみ2時間程度)+仕訳アプリを30分~40分程度です。

1.テキスト読み込み(4週間)

 個人的には、ここが一番重要と感じています。テキストを「わかったつもり」にならないと、全体的な難度や量的なものが把握できず、効果的な予定が立てられないからです。

 今回は商業・工業の2冊があったため、商業→工業の順番で徹底的に読み込みをしました。最初の感想は以下の通りです。

  • 商業簿記:3級よりはるかに難しい。特にここ数年で拡大した範囲が特に難しそうだ。仕訳がしっかりと出来ること、問題のパターンに慣れることが重要そう。
  • 工業簿記:今までの簿記と全く異なるが、内容はそこまで難しくない。差異の内容だけがとっつきにくい。計算間違えしなければ点が取りやすそう。

 そこで、今後の方針を以下のように決めました。

  • 商業簿記は基礎となる「仕訳」に時間を費やして、第1問でしっかりと点数を取る。
  • 商業簿記の第2問・第3問は半分の得点を目指す。
  • 工業簿記の第4問・第5問で点数が取れないと合格は難しいので、演習時間は工業簿記に重きを置く。

2~4.問題演習~再履修~再演習(2週間)

 テキスト巻末に問題集が付随しているものであったため、その問題をそのまま活用しました。前述通り工業簿記を重視したいと思ったため、工業簿記だけはこの流れを三度行いました。「工業簿記→商業簿記→工業簿記→商業簿記→工業簿記」という順です。

 問題演習をしてみると、想像していたよりはるかに出来ない!と感じました。商業簿記は仕訳がしっかりと理解できていない。特に新出題分野となった税効果会計・連結会計が苦手。工業簿記は原価差異分析や直接原価計算等の「仕組み」を考えることが苦手であることがわかりました。

 そこで、商業簿記は仕訳に別途時間を割くこととし、工業簿記はとにかく問題を解き、慣れることを重視しました。

5.アプリ使用(4週間)

 とにかく仕訳の経験を増やすため、通勤時に使用できるようアプリを導入しました。

 実際にやってみると、間違いの多いこと!いかにうろ覚え、しっかりと理解せずに仕訳をしていたか思い知らされました。毎日の通勤で40分程度、アプリに取り組む時間が確保できたので、有効な勉強になったと思います。

 ただ、アプリを回してみても、税効果会計・連結会計は苦手なままでした。問題の解き方ばかりを優先させるため、しっかりとした理解ができていなかったように思われます。

6.過去問(10日程度)

 2~5で明らかに苦手な部分があったにもかかわらず、いまいち解消できないまま時間に押される形で過去問をはじめました。時間を計りながらやってみたのですが、一番最初に取り組んだ過去問は全く時間が足りませんでした。その後も、時間内には解けていても、ケアレスミスを連発していました。

 時間が足りない理由は、単純に実力が足りていなかったこともありますが、1問から5問まで難度を考えず順番に解いていたことも影響していると感じたので、時間の使い方にひと工夫を加えることにしました。

 具体的には、先に問題すべてをじっくりと読み、難度順に取り組むこと。また、後で見直しをする時間は確保できないので、解いた後すぐに簡単な見直しを行うこと、の2点です。

 特に工業簿記は序盤で処理を間違えてしまうと全て間違う可能性があるので、見直しに細心の注意を払うように心がけました。

 また、ケアレスミスは時間よりも深刻に感じました。「単純な四則計算のミス」「記入ケタ間違い」「『営業外手形』や『未収金』等、営業外収益支出の科目間違い」「工業簿記で年間と月間との読み違い」など、テスト形式になると多くのミスをすることに気付きました。

 ケアレスミスはとにかく「気付いて直す」しかありませんので、前述の「解答直後の見直しタイミング」をしっかりと確保し、ケアレスミスがないかしっかりと確認するようにしました。

7.予想問題(3~4日程度)

 過去問を全て解き終えたうえで、テキスト付随の予想問題(3回分)に取り組みました。本番を想定して105分を制限時間としたところ、どの回も85点程度取れていたのでひと安心。

 さあ、本番に臨むぞ!と思ったところで…テキストにさらに「新出題論点からの予想問題」があるのに気付きました。これぐらい余裕だろうと思って取り組んだのですが……全然わかりません。

 当たり前ですが過去問でも出題が少なく、問題に当たった回数も少ないため、考え方からなにからがいまいちわかりません。しかし、もう直前のため完成度を上げることも出来ず、「出ないこと」を祈るしか出来ない状態でした。

 商業簿記の新出題分野も苦手なままだったため、もうとにかく「新出題分野出ないで!」という気持ちで当日を迎えました。

試験日1日の流れ

9時 起床

 軽く食事をとる。アプリでもう一度、間違えが多かった分野の仕訳に軽く取り組む。

12時 出発の準備

 試験会場は自宅から歩いて10分ぐらいだったため、開始30分前の13時着となるように準備を始める。テキストは何を持っていこうか悩んだ末、直前に何を見直したいか直前にならないとわからないため、とりあえず商業簿記・工業簿記のテキストを持っていくことに。

13時 試験会場に到着

 試験会場に着いてすぐにテキストで弱点部分のチェックをする。商業簿記は「税効果会計・連結会計」、工業簿記は「原価差異分析」を中心に見直す。

 隣の席の方が全く同じテキストで勉強し、同じ電卓を机に置いていたを見て「受ける人は自分と同じような人ばかり」と少しリラックスする。

13時40分 試験開始

 問題全体を見る。最悪のケースを避けられたことにほっとしたものの、第3問の「3社の連結精算表」は見たことがない…と少し焦る。

 とりあえず苦手な連結精算表は部分点狙いで最後に回すと決め、「1→2→4→5→3」の順に解いていくことにした。

第1問:仕訳問題(30分程度)

 計算が難しい問題や考え方がわからない問題が多く大苦戦!

  1. 本支店仕訳というのはわかったし、「販売のつど売上原価勘定」の記載があるので商品勘定を使うのはわかった。ただ、「車両減価償却累計額」をどう扱っていいかわからず悩む。
  2. 苦手の税効果会計だったが、シンプルな問題であったため問題なし。
  3. 支払免除とあったので、割引か割戻かわからず、結果「割引」の仕訳を選択、間違えてしまう。
  4. 追徴課税の問題は解いたことがなかったが、基本的な考えは同じと考えて解答した。
  5. 減価償却を複数年しなければならないため、計算に手間取る。

 問1と問5とで時間を費やしてしまい、思いのほか時間が経っていることに気付く。ここまでは計算式や仕訳を計算用紙に丁寧に下書きしていたが、走り書きに切り替えてスピードアップを図る。

第2問:株主資本等変動計算書(20分程度)

 過去問で一度解いていた問題なので、引っかかりなく解ける。自己採点のために合計額のみを計算用紙に転記…というところで、(単位:千円)に気付いてあわてて書き直す。

第4問:部門別計算(30分程度)

 工業簿記の問題は「問題なりに解答していくと、最後の問題に行き着く」という方式がとられていることが多い。この問題もその例から漏れず、順番に解答していった。そんなに難しくは感じなかった。

第5問:等級別総合原価計算(25分程度)

 第4問と同様にそんなに難しく感じなかった。自信を持って解けた。

 この時点で、残り時間は15分程度になっていた。それぞれを解くごとに見直しをしていたので、解いた問題に大きな不安は感じなかったが、第3問を完答する時間はなさそうだと感じた。

第3問:連結精算表(15分程度)

 問題をしっかりと読んでみて、これは無理だ…と思った。題意がわからないものも多く、完全に部分点狙いに切り替える。なお、時間がなかったため、多くの方が引っかかった「X4年度」のところは全く気にならなかった。

 科目「のれん」を書かせる問題があったため、のれんの計算はしっかりとした。また、【資料2・3・5】は読み取れる部分だけしっかりと記入した。【資料4】は題意すらわからず、時間がないため無視。また、計算が難しくなるであろう「非支配株主持分」は最初から計算しなかった。

 出来るところまで、出来るところまで…と思って必死に解いたが、やはり全て埋められずに終了した。試験終了直後の手ごたえは、正直合格は難しいな…という感じだった。

試験中の余談

 退室可能となる試験開始30分後に離席をされた方が相次いだため、今回はとても難しいんだ…と改めて実感した。また、監督の方が一度「試験終了10分前」を誤って20分前に伝えたため、そこで焦る気持ちがさらに強くなった。

自己採点と試験結果

 全てを転記していたわけではなく、特に第3問は計算用紙にいくつかの仕訳を転記していただけなので、自己採点は難しい状態だったが、TACの模範解答を使ってわかるところだけ確認した。

  • 第1問:8~16点?
  • 第2問:10~20点?
  • 第3問:0~6点?
  • 第4問:12点?
  • 第5問:20点

 なんとなく低めの採点が正しいような気がしたため、合格は難しいな…と改めて実感。今年度は他に受験する予定の資格がいくつかあるため、簿記2級は来年に改めて受験しようと思っていた。

 受験した商工会議所は4日に結果発表であったため、4日0時にさっそく確認。まず合格者番号を恐る恐る見てみると…番号があった?!思わぬ合格に喜びもひとしお。合格率を見て、改めて「過去最高難度」だったんだと実感する。

 実際の結果は以下の通り。思っていた点数より全てが高めだった。

  • 第1問:16点
  • 第2問:20点
  • 第3問:8点
  • 第4問:18点
  • 第5問:20点

結びに

 簿記3級から2級まででかなり間隔が空いていたこと、勉強時間がそんなに長く取れなかったこと、また、直前に受験した資格と異なり、とにかく計算がメインであったため、勉強そのものが非常に苦痛でした。

 簿記の勉強を始めるなら、間髪をいれずに3級→2級と受験されることをおすすめします。

 今回の勝因は、仕訳の反復練習により仕訳の仕組みを改めてしっかりと考えられたこと、最終的に工業簿記で苦手な問題がなくなったこと、ケアレスミス対策がうまくいったこと、の3点だと思います。

 また、苦手な分野を放置しっぱなしの受験は本来邪道ですが、苦手問題が複数出題されなかったこともよかったです。これから受験される皆さんは、解けない問題がないようしっかりとご準備いただければと思います。

管理人からへびさんへ追加の質問

 勉強期間中のモチベーションの維持方法を教えてください。
 他の方に失礼な話かもしれませんが、もともと「やる気が出ない」なかでなんとか勉強するため、なかば強引な形で申し込みをしました。

 勉強した期間も短期間ですので、モチュベーションが低下したタイミングはなかったです。個人的には短期間集中型の方が向いているような気がします。

 また、さぼらずにしっかりと取り組めるよう、学習時間を日々のルーチンに組み込んでいました。

管理人コメント

 へびさん、簿記2級試験の合格おめでとうございます。また、合格体験記をご投稿いただきありがとうございました。

 最近の簿記2級試験は第2問・第3問が難しくなることが多いため、第1問の仕訳と第4問・第5問の工業簿記でしっかり点数を取る必要があります。

 へびさんも「結びに」のところでおっしゃっていますが、なるべく早い時期に仕訳や工業簿記の対策に取り掛かるのが効果的です。ぜひ見習ってください。

 また、勉強期間が短い場合やじゅうぶんな勉強時間を確保できない場合は、へびさんのようにある程度割り切って苦手分野を切ってしまうのもひとつの方法です。

 頻出論点の連結・税効果会計を切ってしまうのはリスクが高いのでおすすめできませんが、すべてが中途半端になってしまうよりは良いかもしれません。

 短期合格を目指す場合はある程度のリスクを取って、極端にメリハリを付けて勉強を進めるのもアリだと思います。

へびさんが使われた教材や電卓のまとめ