短期合格のカギは「理解重視」と「絶対に合格するという強い意志」です!

  • 投稿者:小倉さん
  • 勉強形態:独学
  • 受験回数:1回
  • 勉強期間:約1か月

はじめに

 第139回簿記検定試験2級に合格することができたので、これから日商簿記2級の取得を目指す方の役に立てればと思い、投稿させていただきます。

 特に社会人の方や、短期合格を目指す方、独学で3級を飛ばして2級を受けるという方に参考にしていただければと思います。

受験に至った経緯

 社会人受験者の多くがそうであると思いますが、キャリアアップのため、実用的で認知度の高い資格として日商簿記の資格取得を目指しました。受験を決めたのが1月で、受験日の1ヶ月半ほど前です。

 その時点で簿記についての知識もなければ日商簿記の難易度もわからず、一番の難関である1級を受けようと直近の試験日を調べたところ、2月実施の139回では2~4級しか実施されないとのことでしたので、実施される中で一番上のレベルである2級の受験を決めました。

 今となってみれば、2級でもギリギリに試験範囲の学習を終えたので、1級が実施されていない回で良かったです。

勉強開始時の知識レベル

 簿記というものに触れたことがない、全くのゼロからのスタートでした。

使用した教材(ウェブサイト)・電卓

簿記3級

 2級のテキストでは3級の知識があることを前提としているようでしたので、2級のテキストに入る前に、3級の範囲を軽く勉強することにしました。

 3級については、無料で学べるウェブサイトがたくさんありますが、動画で解説されていてとっつきやすそうだとういことと、短期間で学習できる(1時間×7回)ことから「簿記e支援ネット」というサイトを使って学習しました。

 このサイトは、ダウンロードしたレジュメを印刷して使用するので(もちろんPDFとして閲覧できますが)印刷できる環境のない方には使いづらいかもしれません。

簿記2級

  • サクッとうかる日商2級商業簿記 テキスト(ネットスクール)
  • サクッとうかる日商2級工業簿記 テキスト(ネットスクール)
  • サクッとうかる日商簿記2級 厳選過去問ナビ(ネットスクール)

 2級は解説しているウェブサイトも少なく、テキストを買ったほうが情報がまとまっていて効率良く学習できると思いテキストを購入しました。

 有名どころのテキストであればどのテキストでも問題なく学習を進められると思い、値段が手頃なサクッとうかるシリーズを使用しました。まずは商業簿記を購入してみて使いやすかったので工業簿記も同シリーズを購入しました。

 過去問題集については、何を使っても良いと思っていたので、古本屋にあった過去問ナビの最新第4版を購入しました。個人的には、テキストの確認問題と過去問をすれば他に問題集を買う必要はないと思います。

教材&ノート
教材&ノート

電卓

 DF-120GT(CASIO)をAmazonで2,200円程度で購入(定価7,560円)しました。「左手の小指の位置に「C」キーがあり押しやすい」「定数計算(工業簿記の計算で使う)機能を利用している時に画面にKマークが表示される」の2つが自分に合うと思い、これを選びました。

 電卓を叩く手は、(私は右利きですが)左手を使うことにしました。

 左手を使う理由は「右手の鉛筆を持ち替える必要がないということ」と「問題を読んで考えている間など、電卓を使わない時に電卓が右側にあると邪魔なので左に置きたかった」という2点です。

 元々電卓を使わず、パソコンのキーボードもテンキーレスのものを使っていたので、右手入力する癖もついておらず、左手入力にすんなり慣れることができました。

電卓(CASIO DF-120GT)
電卓(CASIO DF-120GT)

勉強時間

 平日に働きながらの勉強でしたので、勉強時間の目安は以下の通りです。片道30分のバス通勤をしていますが、車酔いしやすいため通勤時間での学習はしませんでした。

  • 月~金:1~3時間
  • 土~日:3~6時間

 合計の勉強時間は63時間です。その内訳は以下の通りです。

  • 3級(ネット):10時間
  • 2級商業簿記テキスト:13時間
  • 2級工業簿記テキスト:15時間
  • 2級過去問題集:25時間

学習の流れ・勉強方法

3級の学習(1週間)

 1日1時間半程度、講義を視聴し、毎回レジュメの最後に載っている練習問題を解きました。レジュメを読み返すつもりはありませんでしたが、覚えたい用語にはマーカーを引き、計算の流れ等はメモ程度に書き込みながら講義を視聴しました。

 この時点では、個別の仕訳処理は理解したものの、決算整理仕訳など複数の処理が必要なものに関しては間違いが多く、解説を見て理解するレベルでした。

 その後、第130回の過去問を解きましたが、出来はあまり良くなかったものの(100点中54点)、解説を見て得点できなかった箇所の理解が完全になったと感じたので、3級は切り上げて本来の目的である2級の学習に移りました。

2級商業簿記(2週間)

 まとめノート等は作らず、テキストのみで学習しました。

 サクッとうかるテキストでは各章の最初のページにその章の重要事項がまとめてあったので、その全てにインデックスシールを張り、重要事項をすぐに確認できるようにしました。各章を読み終えたら必ずその章の重要事項に戻って確認してから次の章に進みました。

インデックスを貼ったテキスト
インデックスを貼ったテキスト

 テキストがよくまとまっていたので、マーカーを使ったり書き込んだりはせずに、重要な箇所や2級で初めて出てきた論点で後から確認したいと思う箇所には付箋を貼りながら読み進めました。

 テキストの確認問題はB5サイズのキャンパスノートを上下で半分に切ったものに解いていきました。半分に切ったノートを使う理由は以下の3点です。

  1. 机の上で場所を取らないこと
  2. テキストがA5サイズなのでノートがB6だとまとめて置いておくのに邪魔にならないこと
  3. 1ページがまるごと視界に入るのでどういった問題が苦手なのか確認しやすいこと

 なお、間違えた仕訳等は必ずノートに赤ペンで正しい答えを書きましたが、解き直しはしませんでした。

半分に切って使ったキャンパスノート
半分に切って使ったキャンパスノート

 また、テキストに目安として載せてある目標スケジュールは無視して、キリのいいところや集中力の切れたところで区切って学習を進めました。

 テキストを1周して商業簿記を終えましたが、私はこの期間に試験までまだ時間があると思い少し中だるみしてしまいました。2週間のうち勉強した日数は実質7日程度でした。

2級工業簿記(5日間)

 商業簿記と同様に学習を進めていきました。差異分析図に関してのみ、問題を解く前に白紙に再現できるかを実際に書いて確認しました。

 工業簿記は商業簿記に比べ内容が軽いですが、その分同じことを繰り返している感じがして飽きがきやすいように感じました。簡単な例題や正解した確認問題の解説部分は流し読みしたり読み飛ばしつつ、確認問題だけは全てしっかり解いていきました。

 試験1週間前の日曜日にようやく工業簿記のテキストを1周して2級の全範囲を終わらせることが出来ました。

2級過去問題集(1週間)

 問題集に付属の「サクッとBOOK」の問題を実際に解きながら問題別の解答手順を一通り確認しました。ここで少しじっくり時間をかけすぎてしまい、試験3日前にしてようやく過去問に取り掛かりました。

 過去問題集の第1回~第4回は過去問をだんだん難しくなるよう難易度順に組み換えてあった上に問題用紙にヒントが載っていたので、演習をあまり積んでない自分が取り組むには丁度良かったです。

 試験3日前に解いた第1回が80点、第2回が84点となんだかいけそうな気がしてきました。試験2日前は仕事で疲れていたので勉強をせずに寝てしまいました。

 そして、試験前日に解いた第3回が72点、第4回が70点でこのままだと本試験レベルだとちょっと危ないと感じましたが、各回とも解説はしっかり読み込んでいきました。

試験日の1日の流れ

午前

 8時頃に起きて朝食を食べ、9時頃から勉強を開始しました。

 少しでも多くの形式の問題に触れておきたかったので、過去問題集の第5回(第129回本試験問題)を解きました。採点結果は62点でしたが、この回を解いていたことで今回合格出来たと思うほどとても役に立ちました。

 これ以上問題を解く時間はなかったので、テキストの付箋が付けてある箇所を確認し、12時まで勉強しました。

午後

 食べ過ぎて眠気が来ると困るので、お腹が空かない程度にお昼を食べ、忘れ物がないか確認してから家を出ました。

 集合時間の20分前に試験会場に着きました。会場は商業高校や大学からも近いので高校生や大学生、社会人等多くの方が受験されていました。2級は200名程度を2会場に分けて試験が行われるようでした。

 席を確認すると、試験会場の最前列の中央の机でした。試験監督のすぐ前で落ち着かないかと思いましたが、他の受験生が視界に入らないので集中しやすかったです。

 試験直前は隣の人が解き終わった過去問(もしくは模試)の解答用紙を見ているのが見えて自分の演習不足に少し不安を感じましたが、落ち着いて解けば大丈夫だろうと、持ってきた参考書類はあまり見ずに頭の中を整理して落ち着かせることに集中しました。

試験開始!

 解く順番を決める時間すらも勿体なかったので、第1問から第5問まで順番通りに解いていきました。

 第1問:見たことのない仕訳がありましたが、できない問題に時間を使うのは無駄だと考え、あまり悩むことはせずにとにかく思いついた通りの答えを書いていきました。

 第2問:減価償却費の問題。見たことのない形式でしたが、問題の記述通りに解いていけば決して難しい問題ではないと思いました。

 第3問:午前中に解いた過去問の第3問で決算整理前残高試算表から修正仕訳と整理仕訳をして損益計算書を作る問題をやっていたので、焦らずに仕訳をしていきました。

 一通り解いてみましたが、どうしても計算が合わず、最悪部分点狙いで時間が余ればもう一度解き直そうと切り上げました。

 第4問・第5問:工業簿記は過去問の形式通りの問題だったので落ち着いて解いていきました。

 ここで時間が30分ほど余っていたので第3問に戻りました。問題用紙と解答用紙と計算用紙とにらめっこしてどこが間違っているのかをひたすら考え、手当たりしだいに計算していったところ、試験終了5分前でようやく計算を合わせることができました。

 やりきった達成感を感じて試験を終えることが出来ました。

試験結果

81点/100点

 試験終了後の所感として合格はまず間違いないと確信していましたが、第1問に自信がなかったことと、他の問題についても完璧に解けた自信はなかったのでギリギリでの合格だろうと思っていました。

 合格発表日、仕事帰りのバスの中で合格発表のことを思い出し、商工会議所のウェブページで自分の受験番号を見つけてほっとしました。

合格証書
合格証書

最後に

 日商簿記2級は決して難しい試験ではありません。働きながら、もしくは学校に通いながら1ヶ月で合格することも十分に可能だと思いますし、実際になんとか合格できました。

 私が簿記の勉強で一番大事にしたところは、間違えた問題を理解せずに次に行かないことです。解説を読み、必要に応じてはテキストの該当箇所に戻り、完全に理解をしてから次に進みました。

 苦手な所を作ってしまっても後から戻って克服するような時間はないと思っていたので、とにかく全部を1回で理解するつもりで勉強しました。

 そして、私は受験を決めた瞬間から試験を終えるまで、一度たりとも自分の合格を疑いませんでした。当日の朝に解いた過去問で合格点が取れていなかったにも関わらず、です。

 この自信と、既に納めてしまった受験料を無駄にしたくないという思いがあったおかげで最後まで勉強をやりきることができましたし、試験にも全力で臨めたと思います。

 これから簿記の資格を取りたいと考えている方のうち、なかなか勉強を始められない方やダラダラと勉強してしまう方は、「◯月くらいを目標に取ろう」ではなく、まずは直近の試験に申し込んでみてそこで合格できると信じてがむしゃらに勉強してみるのも一つの手だと思います。

 ただ、これは全ての人には向かない勉強法だと思いますし、確実に合格するにはむしろもっと計画的に勉強を進めるべきです。特に問題演習を繰り返し行うことで簿記の力は確実に付くはずです。

 これから簿記2級を目指す方に、この体験記が少しでも役に立てれば幸いです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

管理人から小倉さんへ追加の質問

 小倉さんの得意な論点と苦手な論点を教えてください。また、苦手な論点を克服するためにどのような勉強をされましたか?
 得意な論点は、仕訳日記表と特殊仕訳帳、直接原価計算です。得意というよりは、仕訳やややこしい計算をしなくてよかったので解いていて楽しかったです。

 苦手な論点は、標準原価計算の差異分析です。ボックス図やシュラッター図に関しては、図と計算を照らし合わせて図の意味を考えることですんなり覚えることができましたが、計算は、同じ単位(円、時間、kg)の数字を一度にいくつも扱うので、計算がごちゃごちゃした印象があり、かなりの苦手意識を持っていました。

 これを克服するために、ボックス図とシュラッター図を眺めて、そこに出てくる数値の一つ一つに関して「これって何だっけ?」というのをじっくり考えました。ボックス図とシュラッター図を覚える時にしていたことの逆をしているような感じでしょうか。

 「シュラッター図には『標準』『実際』『基準』があるのにボックス図には『標準』『実際』はあるのに『基準』がないのはなんでだろう?」など、図を見て疑問に思った点=自分が理解できていない点として、テキストを読み返して本当に図を理解してからは、計算に必要な数値を迷うことがなくなりました。

 ここで、私が勉強する際に一番大事だと思っていることが、理解したつもりで終わらせないということです。

 どのような論点でも本当に理解していれば、特に簿記においては同じ形式の問題を間違えることはほとんどないと思います。簿記2級を勉強した限りでは、問題を繰り返し解かなければ理解できない論点はないです。

 繰り返し同じ問題でつまずいている方には、一度立ち止まって自分はどこがわかっていないのか、この問題では何を問われているのか、じっくり考えてみることをお勧めします。

 しかし、第1問の仕訳は多くの問題を繰り返し解くのが大事だと思います。慣れていない仕訳は時間がかかりますし、間違えます。私は、第1問は試験までに克服することができませんでした。

 他に、特に苦手には感じていませんでしたが、第3問の精算表と財務諸表はテキストをやっていた時点で実際の問題を解ける自信がなかったので、過去問を解き始めてから、正解した箇所も解説をじっくり読みながら問題を解く際の手順を覚えていきました。

 あと、実際に問題を解いて財務諸表の形式をあやふやに覚えていたことがわかったので、特に過去問で穴埋めになっている箇所を中心に完璧に覚えるようにしました。

 小倉さんの、勉強期間中のモチベーションの維持方法を教えて下さい。
 「勉強すれば絶対に合格する、勉強しなければ絶対に合格しない」と思っていたので、もちろん前者を選ぶのみ、といった感じでした。

 試験まで残り2週間を切ってからは「今勉強しないと試験までに間に合わない」という焦りのような気持ちもあったのでなんとか勉強し続けました。

管理人コメント

 小倉さん、合格体験記のご投稿ありがとうございました!

 仕事と勉強を両立…しかも1か月という短い期間で「ゼロ→2級合格」レベルに持っていくのはかなり大変だったと思います。普通にすごいです!

 テキストだけでトレーニング(テキストに対応した問題集)を使っていなかったり、60時間ちょっとの勉強時間で3級を飛ばして2級の試験に臨むというのは…正直、全ての方におすすめできる勉強スタイルではありません。ある程度、地頭が良くないと消化不良のまま試験に臨むことになると思います。

 ただ、理解に重きをおいた勉強スタイルや、「絶対に1回で合格する!」という強い信念はすべての受験生の参考になると思いますので、この2点はぜひ見習ってください。

 あとは…B5サイズのキャンパスノートの使い方がユニークですよね。今までにいろんな方の「ノートの使い方」を拝見してきましたが、上下に切り分けて使う小倉さんのスタイルは初めて見ました。

 「ノートの使い方」に絶対的な正解はありませんので、小倉さんのように「自分にとって一番よい形」を模索して、使い方にひと工夫加えるのもおすすめです。

小倉さんが使われた教材や電卓のまとめ