30点は間違えても大丈夫!発想の転換をして緊張を和らげよう!

  • 投稿者:エトペンさん
  • 勉強形態:専門学校(通学)
  • 受験回数:2回
  • 勉強期間:約3か月(5年)

はじめに

 私は日商簿記1級の勉強をしています。それなら2級には受かって当然だろうというのが世間の一般的な考え方だと思います。それなのになぜ私があえて2級を受けたのか…その理由や合格に必要な勉強方法などを紹介します。

 今回は受験2回目で、初めて受けたのは大学生の頃でした。当時、予備校の講師に上位資格の勉強をしているのだから2級は受かるだろう!と言われるがまま申し込むも残念ながら不合格。全く知らない論点も出題されていたので全範囲の知識を網羅していなかったかもしれませんが、それでも不合格は不合格。苦い思い出ですが、これが私の日商簿記試験との出会いです。

 しばらく2級のことは忘れていましたが、もう一度基礎から簿記と向き合ってみたいと思い書店で関連書籍を立ち読みしていました。そしたら基礎知識に漏れがあるのを発見し2級だから!と考えず、もう一度2級レベルの勉強から始めました。

 …とはいっても、この段階で一通りの内容は勉強済みだったため、苦手な工業簿記はテキストと問題集を購入し、商業簿記は過去問ベースで勉強しました。

勉強の基本方針

 勉強をするにあたり、まずは目標(目的)と計画を設定しました。

 目標は試験を受けるからには合格ですが、それと同時に目的の明確化に努めました。なぜ2級を受けるかです。会計に興味を持ったから、会社で必要になったから…人それぞれだと思いますが、私は基礎知識の再確認のためです。このため、合格だけを目標とするなら過去問を解くのが効果的ですが、苦手な工業簿記はテキストと問題集を購入しました。

 計画は目標を達成するために必要な時間設定です。永遠とテキストと問題集をやっていても効率的ではないので、いつまでに終わらせ、いつから過去問に移るかという時間設定を行いました。

 幸い試験日までに時間があったので、二週間前にテキストと問題集が終わるように設定しました。ただ、あくまでも計画は計画で、実際に終わったのは一週間前で、そこから過去問を解きはじめました。

使用電卓

 SHARPのEL-G36を使用していました。資格受験用の電卓のため、サイレントキーや早打ち機能などは一通り揃っています。昔使用していた電卓はクリアキーが電卓の左下に位置し、0や1を押す際に間違ってクリアキーを押すことが多々ありました。なので、最終的にはキーの配置が決め手となりました。

 電卓を選ぶ際には、上述のサイレントキーや早打ち機能が付いているものがオススメです。日商2級では必要ありませんが、上位資格や経理を目指すなら√キーが付いているかを確認して下さい(1級ではEOQなど)。信じられないかもしれませんが、有名メーカーの電卓で√キーが付いていないものを見かけましたので…。

使用教材

 TAC出版の合格テキストおよび合格トレーニング、過去問もTACのものを使用していました。基礎知識の確認が目的だったため、実際に書店で吟味し一番説明や図表が充実しているものを選びました。価格だけ見れば割高ですが、自分の目的に合致したものだったので迷わず決定しました。

 私は受験経験者で、改正論点の経緯もある程度は把握していたため、中古書店に足を運び過年度のものを探しました。幸い問題集は100円で見つけたので購入し、テキストのみ新品にしました。工業簿記はほとんど改正がないため、特に問題なく使用できました。

 しかし、はじめて受験される方は改正論点に加え出題内容や傾向に変化が生じていますので、最新のものを購入するようにしてください。特に商業簿記は頻繁に改正されているため、ご注意下さい。書店で10年前のものも置いていましたが、いったい誰が購入するのでしょう…。間違っても手を出さないようにしてください。

試験日の1日の流れ

  • 試験前夜~翌朝

 自分の中では受かって当然だという意識があり、これが却って緊張してしまいました(試験当日よりも前夜の方が緊張していました)。前夜は問題集の間違えたところをざっと見直すに留め、しっかりと睡眠をとりました。

 翌朝に持ち物の確認(電卓、筆記用具など)と試験会場の確認を行いました。申し込みの際に試験会場の地図は頂きましたが、念のためインターネットで場所の確認を行いました(方向音痴なので迷える自信がありました)。

  • 試験会場まで

 試験会場に向かうときは、テンションの上がる曲を聴くようにしていました。巨人の沢村投手は試合前に音楽を聴いて士気を高めるといいます。受かって当然であっても、落ちる可能性もないとも言い切れないため前向きになれる曲を選びました。

 試験会場に余裕もって到着すると、特に見直しは行わず身体や指のストレッチを行っていました。2時間は座りっぱなしになるため、ベストパフォーマンスを発揮するために軽めのストレッチを行いました。指のストレッチというのは、電卓の1から9を叩くと45になるのでこれを何度か行いました。

  • 試験開始

試験が始まると、まずは問題をざっと見渡し時間配分の計算を行いました。私は第一問→工業簿記→第二問→第三問の順に解きました。なかには工業簿記→商業簿記の順で解く方もいると思いますが、私が第一問から解き始めたのは当日の気分です。この方法だと商業簿記→工業簿記→商業簿記と頭を切り替える必要があるため、一般的な工業簿記→商業簿記の順が良いと思います。

第130回・試験問題についての雑記

 第一問 (1)有価証券の購入という論点です。なかには、手数料の処理・端数利息の処理など様々な論点が含まれていました。端数利息については、指示がなかったのでもし過去問を解いていなかったら月割りをしていたでしょう。

 当日は、うるう年の今年に限って366日で計算なんてことはないよな…と考えながら電卓打っていましたが、365日で計算したら綺麗な数字になったので一安心しました。

 見直し段階で気付きましたが、平成○○年表記で平成23年となっていたのでうるう年の366日で計算するなというメッセージだったのでしょう。

 (2)(5)電卓を叩く必要もなく、類似問題が過去問でも繰り返し出題されていたので確実に正答したい問題です。(3)生産高比例法の問題です。トラックの台数と間接法の指示を見落とさなければ正答にたどり着けたでしょう。

 (4)株式発行の問題です。テキストや過去問で繰り返し出題されており、ひねりもありませんでした。創立費に類似の開業費を語群に含めていたら難易度が少し上昇していたかもしれません。

 第二問 過去問でも繰り返し出題されている伝票会計です。論点としての難しさはないため、いかに集計ミスを防止するかにかかっていたと思います。私は仕丁番号を一部書き忘れてしまいましたが、許容範囲内でした。

 第三問 本支店問題です。前T/Bの一部が空欄になっており、貸借差額でしか求まらない数値があるのかと思いました。しかし、実際に解いてみると自分で直接算出することも出来れば貸借差額の金額と自分の算出した金額を比べることも出来ました。

 たとえば、期首の繰延内部利益の金額を算出出来なくても、貸借差額で求めることが出来たのでこの論点を忘れていた方も救われたのではないでしょうか。

 未達事項の発送未達は、内部利益が含まれているものか明示がなかったため本店仕入勘定と支店売上勘定を照会して確認しました。また、為替手形の振出しというあまり見かけない論点も出題されたため、面食らってしまった方もいたでしょう。

 前受家賃の月割計算も難易度の高いものとなっていたと思います。単純に12で除すと割り切れないことから、ここから月割りの論点に気付かれたと思います(実は私も)。この手の論点は、線表を書いて前T/Bの金額が何ヶ月分の金額なのか算出するのが一番ミスが少なくなります。私は線表に加え、丁寧に前期末・当期首・期中・当期末の仕訳を書いて解きました。

 P/Lは単に売上原価と表示せずに、期首・期末商品棚卸高と当期商品仕入高に分かれていたので点数を拾いやすかったのではないでしょうか。

 第四問 補助部門がある場合の工程別総合原価計算でした。見慣れない問題で、この問題を解けたかが合否を大きく左右したのではないでしょうか。問題文だけ見たらよく分からない問題ですが、解答用紙まで見たら解き方を示してくれていたようなものでした。

 なので、解答用紙にまで目を向けて全体像をつかめたかがポイントとなったでしょう(解答用紙も問題の一部だということです)。

 第五問 単純総合原価計算の問題です。仕損の処理を問われていないので、材料Bの平均投入の処理に気を付けながら解けば満点を狙えた問題でした。

本試験時の下書き用紙1
本試験時の下書き用紙1
本試験時の下書き用紙2
本試験時の下書き用紙2

試験結果・目標点数との乖離

 結果は、自己採点で第一問・第四問・第五問が満点でした。第二問は一部仕丁を忘れ、第三問は繰越利益剰余金がB/S貸借差額とP/Lの当期純利益を使用し求めた金額と合わなかったため、どこかケアレスミスをしたと思います。

 合否のみで、点数は開示してもらえませんでしたが最終的には9割弱に落ち着いたと思います。これは自分の目指していた点数とほぼ同じでした。70点で合格の試験で100点を狙うのは効率的ないので、受験経験者の私でも100点を狙った勉強はしませんでした。

 もちろん狙うことは出来たでしょうが、あえてそれはせずに30点分は間違えられる!という気持ちで挑みました。こうすることで、過度に緊張することを避けられました。

合格するための勉強法

 商業簿記と工業簿記に共通していえることですが、全体像を把握するということです。とくに工業簿記は日常との関連性が薄く困難ですが、趣旨・目的と仕訳・計算をリンクするのが全体像の把握に役立ちます。仕訳はもちろん大事なのですが、その背後にある考え方や処理を併せて理解することでより大きな視点での理解が可能となります。

 たとえば、工業簿記の部門別計算です。部門別計算は、費目別→部門別→製品別という流れの中の第二次の計算段階です。まず、何を部門別に計算しているのかという計算に必要な大前提のイメージをつかみます(主に製造間接費です)。

 次に、部門別の目的の一つに製品原価の正確な計算があります。なぜ部門別計算を行うことで計算が正確になるのかを計算とリンクさせて抑えます。その上で、各論ともいえる部門費の第一次集計から第三次集計の理解や、その段階の一部を予定原価で計算するとどうなるかまで抑えたら理解としてほぼ十分です。

 このレベルに達したら計算で何をやっているかをすんなり理解出来るはずです。問題集で第二次集計の補助部門配賦表の問題が解けても(直接配賦法や相互配賦法)、仕訳や勘定記入になると突然解けなくなるという症状に身に覚えがあれば、これは全体像の理解が不十分ということです。

 本試験では、計算さえ出来れば問題は解けるため全体像を抑えるのは一見遠回りにも思えますが、全体像を抑えた上で計算を抑えるのとそうでないのとでは天と地の差があります。これが出来ていれば今回の工簿第四問は難なく答えられていたのではないでしょうか。

さいごに

 現在は日商1級に向けて勉強していますが、日商2級の理解が大いに役立っています。仮に2級の勉強をせずに1級の勉強をしていたら全体像をつかめないまま電卓を叩いていたでしょう。

 2級の内容を理解出来ていれば、1級の応用論点に関しては積み重ねていくだけなのでそれほど難しく感じません。逆に、2級の基礎的前提ともいえる内容を理解しないまま1級の勉強をしていたら今ほどの満足感は得られなかったでしょう。

管理人からエトペンさんへ追加の質問

 エトペンさんの、勉強期間中のモチベーションの維持方法を教えて下さい。
 計画や目標は少し緩めに設定(理想標準でなく一定のアローワンスを加味した現実的標準)すること及び勉強のやる気が起きない時は思い切って休息をとることです。

 前者については、計画(特に中長期的な計画)通りに勉強が進むというのは稀なので、少し余裕を持たせたスケジュールを立てました。たとえば、一週間が終了して予定の範囲まで勉強が進んでいないとそれだけでモチベーションが下がってしまうため、達成可能だけど少し緩めな水準に計画を設定しました。

 少し緩めな水準というのは勉強計画だけに限らず、本試験の目標点数も同様です。満点でなくて90点辺りを目標にすることで、第三問の繰越利益剰余金の金額が合わなくても焦らず他の問題にあたることが出来ました。完璧にしなくて良いんだ!という気持ちが芽生え試験勉強も苦になりませんでした。

 後者については、勉強のやる気が起きないのに嫌々机に向かっていても非効率なので少し長めに休憩をとったりその日はオフにしました。休憩中は天気が良ければ散歩をしたり、そうでなければ書店で様々な書籍を読み漁っていました(日商簿記関連の書籍含む)。

 TACの合格トレーニング(問題集)は他の問題集に比べボリュームが多いため、他の参考書と比較したり、苦手論点の説明を見比べたりしていました。オフにするときは、主に家族や友人との時間にあてました。これが程よい息抜きになりモチベーションを低下させることなく勉強を継続出来ました。

管理人コメント

 エトペンさん、合格体験記のご投稿ありがとうございました!勉強計画の策定の仕方、教材・電卓の選び方、効果的な勉強方法などを分かりやすくまとめていただきました。

 まず、教材についてですが、エトペンさんもおっしゃっているようにゼロから勉強を始める方は最新版を購入するようにしてください。商業簿記は特に、安さにつられて中古品に手を出すと後でつらくなります。

 また、SHARPのEL-G36という電卓は私もおすすめです。ただ、この電卓はTACの窓口等でしか買えませんので、個人的にはほぼ同等機能のSHARP EL-N36-Xをおすすめしています。

 価格は5,000円前後とちょっと高めですが、その分だけ操作性・打鍵感も良く、また静粛性も高いです。

エトペンさんが使われた教材や電卓のまとめ