理論よりも計算重視!インプットよりもアウトプット重視!!

  • 投稿者:hrkさん
  • 勉強形態:独学
  • 受験回数:1回
  • 勉強期間:約7か月(2011年11月~2012年6月)
  • 勉強時間:約400時間(平日1時間、休日5時間)

受験のきっかけ

 私の簿記との出会いは大学卒業後、新入社員として入社したときです。当時は簿記の「ぼ」の字も知らず、仕訳?帳簿?何それ?状態だったのですが、配属された部門が管理会計を担っていたため、ほぼ必然的に日商簿記にチャレンジすることとなりました。

 約1年間会計について勉強し、その過程で日商3級と日商2級に合格することができました。その後、部門の異動があってしばらく簿記から離れていたのですが、再び異動で管理会計を担当することとなったため、一念発起して日商1級へのチャレンジを決意しました。

教材と勉強スタイル

  • 合格テキスト 日商簿記1級 商業簿記・会計学(1)
  • 合格テキスト 日商簿記1級 商業簿記・会計学(2)
  • 合格テキスト 日商簿記1級 商業簿記・会計学(3)
  • 合格テキスト 日商簿記1級 工業簿記・原価計算(1)
  • 合格テキスト 日商簿記1級 工業簿記・原価計算(2)
  • 合格テキスト 日商簿記1級 工業簿記・原価計算(3)
  • 合格するための過去問題集 日商簿記1級
  • 合格するための厳選問題集 日商簿記1級
  • 第131回をあてるTAC直前予想 日商簿記1級
  • 日商簿記1級商業簿記・会計学 計算と仕訳マスター
  • 会計学理論マスター 日商簿記1級・全経上級対策
  • 電卓:CASIO JF-120GT

 私は独学で簿記を勉強しました。独学以外に通学や通信という選択肢もありますが、私は人の話を聞いて理解することが苦手で、どちらかというと文章を読んで理解するほうが得意なことから、自分のペースで勉強を進められる独学が向いていると判断しました。

 勉強時間は、平日が1時間くらい、休日が5時間くらいです。会社勤めをしているため、休日に集中して勉強し、平日は隙間時間を利用して復習に努めました。少なめの勉強時間ですが、会社での仕事内容が管理会計担当であるため、仕事と勉強が多少リンクしていることが効いたのだと思います。

 独学するに当たって重要なのは教材選びです。予備校各社が市販している書籍を書店で読み比べてみたところ、TACの『合格テキスト』が最も詳しく計算過程を解説していました。これなら、疑問点を講師に質問することのできない独学でも大丈夫と思い、教材はTACでそろえることにしました。TACの書籍はTAC出版書籍販売サイトで会員登録して購入すると10%OFFとなるため、そちらで購入しました。

 電卓はカシオのJF-120GTを使用しました。会社でもこの電卓を使っており、操作に慣れているからです。他の電卓を使ったことがないので比較はできませんが、打鍵感や携帯性において特に問題ないと感じました。

 ただ、この機種はACキーの直下にゼロキーが配置されています。ゼロキーを押すつもりがうっかりACキーを押してしまってオールクリア…なんて悲劇が起こりかねないので、電卓を選ぶ際はACキーの位置に留意すべきだと思います。

勉強の流れ

インプット期:試験日の7か月前~5か月前(2011年11月~2012年1月)

 この時期は『合格テキスト』を使って集中的にインプットを行いました。休日1日につき3~4論点ずつテキストを読み込んで学習を進め、平日にテキストの読み直しや設例の解き直しを行いました。テキストは、通読という意味では1回転しかさせていません。その代わり、平日の復習(読み直し・解き直し)を必ず行うことで、記憶の定着に努めました。

 なお、私はいわゆる間違いノートの類は一切作成していません。重要ポイントや間違えた問題にはマーカーや付箋などで印を付け、繰り返し目を通すようにしました。

 既述のとおり、私は文章を読んで理解することが得意である一方、人の話を聞いて理解したり、内容を書き出してまとめたりすることが苦手なため、間違いノートを作ろうとするとかえって勉強の効率が悪くなってしまうからです。

 学習範囲の広い日商1級の論点を効率よくインプットするには、自分にとって最も得意な勉強法(私にとっては、ノートを作らずテキストを読み込むこと)を見つけて、根気よくそれを続けることが大切だと思います。

アウトプット期:試験日の4か月前~2か月前(2012年2月~2012年4月)

 インプットを終えた後はひたすらアウトプットに努めることが肝要です。この時期は、休日に『過去問題集』と『厳選問題集』で過去問と予想問題の演習を行い、平日に『計算と仕訳マスター』で各論点の計算問題と仕訳の確認に努めました。

 『過去問題集』は第120回~129回(7回分)を2回ずつ、『厳選問題集』は全6回を2回ずつ解きました。二巡目は1か月ほど時間を空けてから解くとよいです。すぐに二巡目に突入すると、一巡目で問題を覚えてしまっているため、繰り返し問題を解く効果が薄れるからです。

 なお、本試験特有の難解な言い回しやわかりにくい資料の読取りに慣れておくためにも、時間の許す限り多くの過去問を解いておくべきだと思います。

 また、問題演習の過程で、理解していたはずの論点の問題が解けないことも多々ありました。こういうとき、仕訳さえ思い浮かべば何とか正答するきっかけをつかめることが多かったように思います。やはり、簿記の学習においては仕訳が重要なので、仕訳の復習を怠らないようにすべきです。

直前期:試験日の1か月前~前日(2012年5月~6月)

 『直前予想』の予想問題全4回を二巡させました。この問題は過去問よりは易しく作ってあると思われますが、この時点で安定的に80点以上得点することができていました。

 なお、この『直前予想』には理論対策用に理論暗記カードが付いています。それまで理論がどうも苦手で、重要ポイントもよくわかっておらず、そもそもろくに勉強もしていませんでした。

 正直に言うと、アウトプット期に過去問を解く過程で、計算問題に対する理論問題の割合の低いことが判明したため、理論の勉強については『合格テキスト』でさらっと勉強するくらいで十分ではないかと感じていたくらいです。

 ただ、さすがにそれだけでは不安が残ってしまうため、理論暗記カードに載っている問題や条文を確認し、さらに『理論マスター』で会計基準にざっと目を通しました。あくまでざっとです。日商1級は計算問題が中心であるため、理論の勉強にそこまで力を入れる必要はなく、計算問題対策を優先すべきだと思います。

試験結果

  • 商業簿記:21点
  • 会計学 :23点
  • 工業簿記:24点
  • 原価計算:25点
  • 合計  :93点

教材の感想

  • よくわかる簿記シリーズ 合格テキスト(おすすめ度 ★★★)

 計算過程などの解説が詳しく、十分に独学に耐えると思います。発展的な論点は「研究」として区別されているので、学習の優先順位もつけやすいです。『合格テキスト』の設例を完答できる程度に勉強すれば、基礎力は十分につくと思います。

  • 合格するための過去問題集 日商簿記1級(おすすめ度 ★★☆)

 直近14回分の過去問が載っています。TAC出版書籍販売サイトで答案用紙をダウンロードできるため、何度も繰り返し解くことができます(以下の問題集も同様)。解説も詳しいです。

  • 合格するための厳選問題集 日商簿記1級(おすすめ度 ★★☆)

 本試験形式の問題が6回分載っています。様々な論点から構成される総合問題をたくさん解くことができます。難度は過去問と同程度かやや低いくらいでしょうか。過去問ほどくせがないため、総合問題演習にはもってこいだと思います。

  • 第131回をあてるTAC直前予想 日商簿記1級(おすすめ度 ★★★)

 本試験形式の予想問題が4回分載っています。難度は過去問より低いと感じました。この教材は、問題演習のためよりむしろ理論暗記カードのために購入しました。理論暗記カードには重要と思われる理論問題や基準が載っており、最低限の理論の勉強になると思います。

 このカードは、分厚いですが名刺サイズで持ち歩きやすいため、常に携帯して隙間時間に勉強していました。本試験当日も持参し、直前まで確認を行いました。

  • 日商簿記1級商業簿記・会計学 計算と仕訳マスター(おすすめ度 ★★★)

 各論点の仕訳や計算過程がコンパクトにまとめられています。B6サイズで持ち歩きやすいため、「あれ?あの論点どうやって解くんだったかな?」という疑問もすぐに解決できます。

 しっかり復習したいときは『合格テキスト』、隙間時間に軽く復習したいときは『計算と仕訳マスター』というふうに使い分けると便利です。本試験当日も持参し、直前確認に役立ちました。

  • 会計学理論マスター 日商簿記1級・全経上級対策(おすすめ度 ★☆☆)

 日商1級・全経上級の理論問題の過去問と会計基準が載っています(原価計算基準は未掲載)。ただ、基準自体は『合格テキスト』にも載っていますし、問題演習も『過去問題集』や『TAC直前予想』の理論暗記カードで行えるため、この教材については特に必要性を感じませんでした。

勉強のポイント・本試験を受けて気づいたこと

安定した学習ペースを守る

 私は平日1時間、休日5時間のペースで勉強しましたが、インプット期から直前期までこのペースを変えませんでした。会社勤めをしているため、直前期だからといって追込みをかけられるとは限らないからです。一夜漬けや追込みに賭けるよりも、安定した学習ペースを守ることで勉強の習慣を身につけたほうが効率的だと思います。

理論問題よりも計算問題対策を優先

 既述のとおり、理論の勉強にはあまり力を入れず、計算問題や仕訳に時間を費やしました。理論問題はたとえ解けなくてもその問題のみの誤答で済みますが、計算問題や仕訳を間違えるとその問題のみならず他の問題にも波及するおそれがあるためです。

個別問題よりも総合問題対策を優先

 私は勉強期間が7か月と比較的短かったことから、あえて論点ごとの個別問題のトレーニングは行わず、総合問題を数多くこなすことでカバーしました。総合問題は個別問題の集合であるため、総合問題を押さえておくと、必然的に優先度の高い論点も押さえることができ、効率よく学習できると思います。

科目別の学習法

  • 商業簿記

 基礎レベルでよいので、各論点をまんべんなく勉強しておくことが必要です。特に、本支店会計、外貨建財務諸表、連結会計はインプット期にしっかり押さえておかないと、アウトプット期に入ったときに全然問題が解けなくて焦ります。

 世の中も個別財務諸表でなく連結財務諸表を重視するようになっていますし、在外支店や在外子会社を設立する事例も増えていますから、これらの論点は必ずマスターしておく必要があろうかと思います。

  • 会計学

 既述のとおり、理論問題にはそこまで力を入れなくてもよいです。ただし、計算問題は割と突っ込んだ問題が出題されることがあり、侮れません。どの論点が出題されるか予測がつかないので、過去問や予想問題をなるべくたくさん解いて、各論点の底上げを図っておくことが肝要です。

  • 工業簿記

 テキストと過去問・本試験との間で最も難度に差があると感じました。過去問・本試験もよくよく見れば基礎レベル問題の寄せ集めではあるのですが、資料の読取りに工夫を凝らしている問題が多く、慣れるまでは点数が安定しません。

 テキストレベルの問題をしっかり押さえた後は、過去問を中心に問題演習をするとよいです。原価計算基準からも出題されることがありますが、理論暗記カードでざっと押さえておく程度でよいでしょう。

  • 原価計算

 差額原価収益分析や線形計画など、テキストに載っている問題が割と過去問・本試験に近いレベルにあると感じました。ただ、会話問題など読解力を要求される問題がよく出題されるため、これも過去問中心の学習が奏功します。

時間配分を意識した学習が重要

 「試験日の流れ」でも書いたように、工業簿記の一巡目で時間を浪費してしまいました。普段の問題演習時から、まずざっと問題を一読して難度を確認し、時間配分を考えてから解き始めることが重要だと感じました。このとき、必ず見直しの時間も確保するよう考慮してください。本試験では、見直しによる1点、2点のアップが合否を分けることもあります。

見直しのポイント

 本試験時に意識すべき見直しポイントは以下のとおりです。普段の問題演習時から意識しておくとよいです。

  1. 選択問題で、語群にある語句どおりに回答しているか(→必ずしも自分が覚えた言葉どおりに語群に記載されているとは限らない。)
  2. 小数点や有効数字の処理を誤っていないか(→問題文の指示の有無を確認。自分で勝手に判断していないか。)
  3. 単位は問題文の指示どおりか(→円?千円?個数?時間?金額?)

騒音対策

 「試験日の流れ」でも書いたように、試験中に部活動による物音が聞こえてきました。問題を解くのにそれほど支障はありませんでしたが、普段から多少ざわついた場所で問題を解く練習をしておくと、よいリハーサルとなるかもしれません。

 私は集中するためによく耳栓をして勉強していたのですが、あまりに本試験とかけ離れた環境に慣れてしまうのはよくなかったかなと思います。

試験日1日の流れ

  • 7:00 起床

 目覚めて頭がはっきりするまで2時間はかかると思い、試験開始時刻の2時間前に起床しました。普段は朝食後にコーヒーを飲むのですが、トイレが近くなるのでこの日は控えました。

  • 8:30 会場到着

 試験会場は商業高校でした。教室で受験することになるのですが、自宅で勉強していた環境よりもかなり机が小さかったので、席に着いてしばらくは試験用紙、答案用紙、電卓のレイアウトを考えていました。

 その後はリラックスして過ごすことにし、念のためトイレに行ったり、暇つぶしに廊下を歩いたりしていました。もうできることはすべてやったという心境だったので、教材は『計算と仕訳マスター』と理論暗記カードのみを持参し、仕訳や会計基準の確認を行いました。

  • 試験開始!(商業簿記・会計学)

 問題をざっと一読したところ、商業簿記、会計学ともに何とかなりそうだったため、商業簿記の第一問から順番に解くことにしました。時間配分は、商業簿記が50分、会計学が20分程度だったと思います。20分ほど時間が余ったため、見直しに費やしました。なお、商業高校での受験だったため、部活動による物音が聞こえてきて、多少気に障る状況でした。

  • 休憩

 試験前と同じく、リラックスすることに努めました。最低限の復習として、理論暗記カードで原価計算基準の確認のみ行いました。

  • 試験開始!(工業簿記・原価計算)

 ざっと問題を見渡したところ、工業簿記が何だかややこしそう、原価計算は何とかなりそうという印象でした。案の定、工業簿記で手詰まりになりました。このまま考えていても仕方ないと思い、原価計算を解いてから工業簿記を再度解くことにしました。時間配分は、工業簿記一巡目が30分、原価計算が30分、工業簿記二巡目が20分、見直しが10分程度でした。

 工業簿記の一巡目で無駄に時間を使ってしまったため、時間の余裕はほとんどありませんでしたが、原価計算をきちんと解いたうえで再度工業簿記に挑んだため、二巡目は落ち着いて解くことができました。

管理人コメント

 hrkさん、合格体験記のご投稿ありがとうございました!教材や勉強方法についてかなり詳しく書いていただきましたので、1級受験生だけでなく、これから1級の勉強を始めようと思っている人にもぜひ読んでいただきたいです。

 それでは早速、中身を見ていきますが、まず見習っていただきたいのはインプットよりもアウトプットを重視するという点です。

 日商簿記検定1級は様々な切り口で出題されますので、過去問や予想問題を使ってアウトプットを何度も繰り返し、本試験特有の難解な言い回しやわかりにくい資料の読取りに慣れておく必要があります。

 あとは、安定した学習スペースを守るという点もぜひ見習ってください。慣れるまでは大変ですが、慣れてしまえば逆に大きなアドバンテージになります。簿記はスポーツと形容されることがよくありますが、毎日コツコツやることが上達(合格)への近道になります。

 最後に、「見直しのポイント」に書いていただいた3つのポイントはとても重要です。総合問題を解く際にこういう意識を持っている人と、持っていない人では「ひっかけ」にひっかかる確率が全然違います。過去問や予想問題を使って、常にチェックするクセを付けておいてください。

hrkさんが使われた教材や電卓のまとめ